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しかばねをくうおとこ

死屍を食う男

葉山 嘉樹

「新青年」1927(昭和2)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页

青空文庫

万一、深谷がうかがったにしたところで、もしそうなら電燈のついた時彼が寝台の上にいるはずがない。そしてあんなに大っぴらに、スリッパをバタバタさせて出てゆくはずがない。第一、なんのために深谷がおれの寝息なんぞうかがう必要があるのだ! おれは神経衰弱をやっているんだ。幻だ。夢だ。錯覚なんだ!――

こう思って彼は自分自身を納得させて、再び眠りに入ろうと努めた。

深谷はすぐに帰ってきて、電燈を消した。そしてベッドに入ると、間もなくかすかな鼾さえ立て始めた。

安岡は自分の頭が変になっていることを感じて、眼をつむって、息を大きくして、頭の中で数を数え始めた。

一、二、三、四、

五十一、五十二、

四百、四百一、四百二、

千二百十、千二百十一、千二百十二、

彼のやや沈静した頭が、千二百十二を数え終わった時、再び彼は顔の辺りに、人間の体温を感じた。が、彼はこんどはいきなり冷水をぶっかけられたように、ゾッとしはしたが千二百十三、千二百十四と、数珠をつまぐるように数え続けた。そして身動き一つ、睫毛一本動かさないで眠りを装った。

電燈がパッと、彼の瞼を明るく温めた。

再び彼の体を戦慄がかけ抜け、頭髪に痛さをさえ感じた。