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しかばねをくうおとこ

死屍を食う男

葉山 嘉樹

「新青年」1927(昭和2)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页

青空文庫

電燈がパッと消えた。

深谷が静かにドアを開けて出て行った。

――奴は恋人でもできたのだろうか?――

安岡は考えた。けれども深谷は決して女のことなど考えたり、まして恋などするほど成熟しているようには見えなかった。むしろ彼は発育の不十分な、病身で内気で、たとい女のほうから言い寄られたにしても、嫌悪の感を抱くくらいな少年であった。器械体操では、金棒に尻上がりもできないし、木馬はその半分のところまでも届かないほどの弱々しさであった。

安岡は、次から次へと深谷のことについて考えたが、どうしても、彼が恋人を持っているとは考えられなかった。それなら……盗癖でもあるのだろうか?

だが、深谷は級友中でも有数の資産家の息子であった。それにしても盗癖は違う。いくら不自由をしない家の子でも、盗癖ばかりは不可抗的なものだ。だが、盗癖ならばまず彼がその難をこうむるべき手近にいた。且つ近来、学校中で盗難事件はさらになかった。

下痢かなんかだろう。

安岡はそう思って、眠りを求めたが眠りは深谷が連れて出でもしたように、その部屋の空気から消えてしまった。

おそらく、二時間、あるいは三時間もたってから深谷は、すき間から忍び入る風のように、ドアを開けて帰ってきた。