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さつじんめいろ

殺人迷路

江戸川 乱歩

05 (連作探偵小説第五回)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,041 字 · 17 页

青空文庫

「ウン、非常に特徴があるでしょう。実に申分のない指紋だ」

そこには見事に整った螺旋紋の中心から、右の外端にかけて、三日月形の傷あとが、ハッキリ現われていた。

「見給え星田君、これが君を脅かしている犯人の拇指なんだぜ」

正岡警部が、最後に星田の前に写真と拡大鏡を置いて云った。

星田はやっぱり、死人のように蒼ざめていた。喉の奥の辺が、ピクピクと痙攣していて、ものを云えばガチガチと歯が鳴りそうであった。その癖彼はこの指紋については異常な熱心を示した。蒼ざめた顔にネットリと脂汗が浮んでいた。指紋を確めたさに、目もくらみ相だった。

彼はヒクヒクと指先を震わせながら、拡大鏡を取って、指紋を覗き込んだ。そして、ジッと、変に思われる程も長い間、それを凝視したまま動かなかった。

カタリと拡大鏡が卓上に落ちた。落ちても、星田の手は、やっぱりそれを持って写真の上に翳しているような恰好を続けていた。

「星田君、どうしたんです。気分でも悪いんじゃない? さっきから何だか、ひどく元気がないようだったが」

津村が驚いて星田の横顔を見つめながら、不安らしく尋ねた。

「イヤ、別に……いつもの脳貧血かも知れない。