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さつじんめいろ
殺人迷路
江戸川 乱歩
05 (連作探偵小説第五回)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,041 字 · 17 页
津村は、相手の病気を心配しながらも、やっぱりそれを云わないではいられなかった。彼は別に病人の受け答えを期待していた訳ではなかった。半分は独言のつもりであった。ところが、蒼ざめた探偵作家は、それを聞くと、何故かムックリ顔を上げて、軽率な雑誌記者を叱りつけるように呶鳴った。
「イヤ、そうじゃないよ、君。あいつは今まで考えていたより、十倍も恐ろしい奴なんだ。不完全犯罪どころか、こんな完全な犯罪って聞いた事もない位だ」
ピリピリと、全身の末梢神経が躍っているような云い方であった。では彼は病気ではなかったのか。この犯罪の恐ろしさにうちのめされて、脂汗を流していたのだったか。
「だって、あれだけ証拠が残っていて、完全な犯罪って云うのはおかしいじゃないか。それとも君は、何か警察の連中の気附かない、全く別な考え方でもしているのかい」
「そうなんだ。あの連中は、まんまと一杯喰わされているんだ」
星田は待ち構えていたように答えた。蒼ざめた顔に不思議な情熱が漂っていた。
「どうしてそれを、君だけが発見したの? なぜ署長さん達に教えてやらなかったの?」
津村は半信半疑で、この小説家はやっぱり病気らしいなと疑いながら、でも激しい好奇心を抑えかねて、相手にすり寄った。