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さつじんき
殺人鬼
浜尾 四郎
「名古屋新聞」1931(昭和6年)4月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,139 字 · 13 页
美しき依頼人
1
二、三日前の大風で、さしも満開を誇つた諸所の桜花も、惨ましく散りつくしてしまつたろうと思われる四月なかばごろのある午後、私は勤先の雑誌社を要領よく早く切り上げて、銀座をブラブラと歩いていた。
どこかに寄つてコーヒーでも一杯のんで行こうか、いや一人じやつまらない、誰か話し相手はないか、とこんな事を考えながら尾張町から新橋の方に歩いて行くと、ある角で突然せいのひどく高い痩せた男にぶつかつてしまつた。
「馬鹿め、気をつけろい」
と云つてやろうと思つてふとその人をよく見ると、知り合いの藤枝真太郎という男である。
「おや、藤枝か。どうしたい」
「うん君だつたのか。……今日は何か用で?」
「ナーニ、あいかわらず意味なく銀ブラさ。君こそ今頃、どうしたんだい、この裏の事務所にいるんじやないのか」
「今ちよつとひまなのでね、三時半になるとお客さんが見えるがそれまで用がないので、ちよつと散歩に出て来たんだよ。たいてい君みたいなひまな男にぶつかると思つてね。……もつとも今みたいに文字通りにぶつかるとは思つてなかつたがね」
「あははは。そうかい、そりや丁度いい。