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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
「おまえさんは鋭い子だねえ」
「そんなことをむす子の前で感心するのが、まだお嬢さんが抜けない証拠です。僕は賛成しませんね」
K・S氏は一行と歩き乍ら話す。
「抽象派という名前で巴里の前衛画派を総括していますが、めいめい違った個性から出発する画論や成長に向っていることは、先日お話したと思いますが、私の唱えるネオ・コンクレチスムというのは、単に客観的分析主義でなく、その分析して得た結果のものを材料にして、人間のロマン性や創造性によって何かしら創造して行き度いのです。だから従来の分析力も生かし、これに創造という活を入れることを連絡させる点を若し画派の綜合というなら、私のネオ・コンクレチスムは綜合主義とも云えるのです。
「一郎君は一郎君で独自の路を歩いていられます。彼は自然現象中より芸術の力によって美の抽象ということに画論を立てていますが、基礎にはカントの美学が影響を持っているようです。彼はだいぶ永い間ソルボンヌ大学でそれを研究していました。だが彼の画風は、理窟っぽいぎすぎすしたところは毛頭ありません。彼の聡明な物象の把握力、日本人特異の単純化と図案化。それに何という愛憐の深い美の象徴の仕方でしょう。