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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
牛のような青年は、女がたくさんいるテーブルに、同性とダブって並ばされたので、無意識にも手持無沙汰らしく、ときどきかの女とロザリと並んでいるのを少し乗り出して横眼で見た。しかし彼女の気持からは、その男は垢っぽい感触を持ってるので、なるべく一人垣を隔てた向うへどうしても置きたかった。
そんな末梢的なショックはあっても、来た男女に対してかの女は、全部的の好意と親しみを平等に持って仕舞った。鬼であれ蛇であれ、むす子の相手になって呉れるものに、何で好感を持たずにいられようか。大家族の総領娘として育ったかの女には、いざというとき、こんな大ふうな呑み込んだ度胸が出た。
「イチローさん、この方たちになんでも好きな飲みものでも取ってあげなさい」
むす子がかの女の言付けを取次ぐと、めいめいおとなしく軽いアルコール性の飲みものを望んだ。
遠慮の幕一重を距てながら、何か共通の気分にうち溶けたい願いが、めいめいの顔色に流れた。そして夜ふかしで腫ぼったくなっためいめいの眼と眼を見合しては、飲みものの硝子の縁に薄く口を触れさしていた。折角、口が綻びかけていたジュジュも、仲間の一人に入り混ってしまうと、通り一遍の遊び女になってしまって、ただ、空疎な微笑を片頬に装飾するに過ぎなかった。