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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
「こうママンに説明したんだが、誰か異議があるか」
女たちは詰らない顔をした。かの女も詰らない顔をした。
「サヴォン・カディウム!」今度はかの女が突然、むす子に向ってこう呼びかけた。それは確にこの場の打切りになった感興の糸目を継ぐために違いなかったが、かの女は無意識に叫び出して仕舞ったのである。そこにはもう、何も彼も忘れて、子供をからかえる素朴な母になって、春の一夜を過したいかの女が在るばかりだった。
すると憂鬱に黙っていた牛のような青年が、何を感じたか、むっつりした声で怒鳴った。
「ママン、万歳!」
「この男はアルトゥールと云って、独逸が混ってるフランス人ですがね」
とむす子は日本語がみんなに判らぬのを幸い、かの女に露骨に説明した。
「いい思いつきを持ってる店頭建築の意匠家ですがね。何か感激したものを持たないと決して仕事をしないのです。つまり恋なのですが、随分七難かしい恋愛を求めてるんです。僕のみるところでは、姉とか母とかの愛のようなものを恋愛によそえて求めてるようなのですが、当人は飽くまでもただの恋愛だといって頑張ってるんです。西洋人の中には随分独断の奴が多いのです。