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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
自分の考えていることを一々実際にやってみて、行き詰って額をぶつけてからでないと承知しないのです。このアルトゥールもその一人ですが、そんな理ですから、また、この男くらい恋愛を簡単に女に投げかけてみて、そして深刻に失敗した奴も少いでしょう。つまり、こいつぐらい恋愛の場数を踏みながら、まだ恋愛の一年生にとまっている奴も少いでしょう」
「じゃ、一郎はもう卒業生なの」
「まあ、黙って。そこで、おかしい事があるんです。このアルトゥールがどこで女に失敗するかというと、その熱心さがあんまり気狂い染みているというんです。ここにいるロザリもエレンも、一度はその気狂い染みた恋愛の相手になったのですが、女たちの話を訊くと、甘えて卑り下ってしようがないというんです。恋人を実際生活の上でほんとの女神扱いにするんだそうです。希臘神話に出て来るようなへんな着物を拵えて女に着せて、バラの冠を頭に巻かして自分はその傍に重々しく坐っている。まあ、そんな調子です」
「それから奇抜なのは、そういう恋愛を得た時、この男のインスピレーションは高められて、しっしと、引受けた店頭建築の意匠を捗らせて見事な仕事をするのですが、出来上った店頭装飾建築には、一々そのときの恋人の名前をつけるんです。