轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
その青年は、むす子が熱心に覗くであろう筈の新しい縞柄が飾ってある洋服地店のショウウインドウや、新古典の図案の電気器具の並んでいるショウウインドウは気にもかけずに、さっさと行き過ぎた。その代り食物屋の軒電灯の集まっている暗い路地の人影を気にしたり、カフェの入口の棕梠竹を無慈悲に毟り取ったりした。それがどうやら田舎臭い感じを与えて、かの女に失望の影をさしかけた。高い暗い建物の下を通るときは、青年はやや立ち止って一々敵対するように見上げた。横町を越す度毎に、人の塊と一緒に待ち合して通らず、一人ゆっくり横柄に自動車のヘッドライトの中を歩いて自動車の警笛を焦立たせた。かの女はその度に、
「よして呉れればいいに、野蛮な」
と胸で呟き、そしてそのあとに、一郎とわざと口に出して呟いた。その人でない俤をその人として夢みて行き度い願いは、なかなか絶ち難い。
左右の電車線路を眺め渡して、越すときだけ彼女を庇うように片手を背後に添えていた逸作は、かの女がまるで夢遊病者のようになって「似てるのよ、あの子一郎に似てるのよ」などと呟きながら、どこまでも青年のあとに随き、なおも銀座東側の夜店の並ぶ雑沓の人混へ紛れ入って行くのを見て、「少し諄い」