轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
慾も得もない。ただ、寂しい気持に取り残され度くない。ただそれだけの熱情にひかれて、かの女は青年のあとについて行った。後姿だけを、むす子と思いなつかしんで行くことだ。美青年に用はない。
新橋際まで来て、そこの電車路を西側に渡った。かの女は殆どびしょ濡れに近くなりながら、急に逸作の方を振り向くと、いつもの通り少しも動ぜぬ足どりで、雨のなかを自分のあとから従いて来る。その端麗な顔立ちが、雨にうっすりと濡れ、街の火に光って一層引締って見える。彼女は非常な我儘をしたあとのような済まない気持になりながら、ペーヴメントの角に靴の踵を立てて、逸作の近づいて来るのを待つつもりでいると、もう行き過ぎて見えなくなったと思った青年が、角の建物の陰から出て来てかの女にそっと立ち寄って来た。そして不手際にいった。
「僕に御用でしたら、どこかで御話伺いましょう」
かの女は呆れて眼を見張った。まだ子供子供している青年の可愛気な顔を見た。青年は伏目になって、しかし、意地強い恥しげな微笑を洩した。かの女は何と云い返そうかと、息を詰めた途端に、急に得体も知れない怯えが来た。
かの女は「パパ!」