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みずのしたのいし

水の下の石

山本 周五郎

「新武道」1944(昭和19)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页

青空文庫

四

霧は条をなしてながれ、草原を掩い樹立を巻いた。斬り込んで来る敵と迎え撃つ味方の兵とは、その霧の中を縦横に走せちがい、はげしくうち当った、近いものも影絵の如く少し離れるとまるで見えないが、すさまじい絶叫や、呶号のこえや、打ちあう刀槍の響きなどが、前へ後へと移動してやまない、それはそのまま決戦にまで展開しそうだった、緒戦とはみえない烈しい迫合になっていったのである。

四

けれど間もなく敵は寄手の意図に気づいた、おのれの戦法が寄手の壺にはまったことを知った、そこで直ちに兵を城中へとひきあげた。ゆらい甲斐軍は退陣のみごとさで名がある、その時も実にあざやかな采配だった、寄手は追尾して斬り込む折を覘っていたのだが、その隙を与えずに颯とひきあげ、すばやく濠の架け橋を焼いた。杉浦隊でも同じような結果となり、追手の橋板を剥がれてしまったから、両者とも攻め込む足掛りを失うに至ったのである。……もうひと息というところで機会を逸した寄手は、ひとまず二段ほど後退して陣を布き、兵たちに休息を命じた。

杉浦藤八郎と竹沢図書助は、いかなる戦法をとるべきかすぐに協議した、このままでは永陣になるだろう、ゆるされた