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みずのしたのいし
水の下の石
山本 周五郎
「新武道」1944(昭和19)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,791 字 · 28 页
六
追手からの侵入もうまくいった、城兵の混乱に乗じ、集めて来たさまざまの板を、裸になった橋桁へうち掛けうち掛け、寄手の兵はおもてもふらず斬り込んだ。図書助は二人ずつ殪して死ねと云ったが合戦は圧倒的な味方の勝で、燃えあがる火をくぐり渦巻く煙を冒し、敵を到るところに追い詰めては討った、辛くも城を脱出したのは僅かな数で、さすがに降伏する者はなかったが殆んど城兵の大多数が斬り死にをし、夜の明けるじぶんには興福寺城はまったく味方の手に帰したのである。……勝鬨をあげる暇もなく、すぐに本陣へ使者を出した、燃えている火を消し、負傷者の手当を急いだ、それから兵の点呼をしたが、討死八十余名、負傷六十余という損害である。予想もしなかった好戦果で、はじめて城壁をゆるがす歓呼の声がどよみあがった。
六
大七は小弥太を捜しまわった、あのとき浮きあがらなかったかれは、どこからか這い登って戦場へとびこんだ筈である、呼集のときみえなかったのは負傷でもして動けずにいるのではないか、そう思ったので、城の中を隅々まで走せまわって捜した、しかし小弥太はどこにもみえなかった。