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みずのおんな
水の女
折口 信夫
「民族 第二巻第六号」1927(昭和2年)年9月、「民族 第三巻第二号」1928(昭和3年)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,525 字 · 38 页
たなばたつめとは、たな(湯河板挙)の機中にいる女ということである。銀河の織女星は、さながら、たなばたつめである。年に稀におとなう者を待つ点もそっくりである。こうした暗合は、深く藤原・奈良時代の漢文学かぶれのした詩人、それから出た歌人を喜ばしたに違いない。彼らは、自分の現実生活をすら、唐代以前の小説の型に入れて表して、得意になっていたくらいだから、文学的には早く支那化せられてしもうた。それから見ると、陰陽道の方式などは、徹底せぬものであった。だから、どこの七夕祭りを見ても、固有の姿が指摘せられる。
でも、たなばたが天の川に居るもの、星合ひの夜に奠るものと信じるようになったのには、都合のよい事情があった。驚くばかり多い万葉の七夕歌を見ても、天上のことを述べながら、地上の風物からうける感じのままを出しているものが多い。これは、想像力が乏しかったから、とばかりは言えないのである。古代日本人の信仰生活には、時間空間を超越する原理が備っていた。呪詞の、太初に還す威力の信念である。このことは藤原の条にも触れておいた。天香具山は、すくなくとも、地上に二か所は考えられていた。