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みずごもり

水籠

伊藤 左千夫

「ホトヽギス 第十一卷第二號」1907(明治40)年11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,600 字 · 10 页

青空文庫

今日の景色には静かという趣は少しもない。活動力の凋衰から起こる寂しい心細いというような趣を絵に書いて見たらこんなであろうなどと考える。

毒々しい濁り水のために、人事のすべてを閉塞され、何一つすることもできずむなしく日を送っているは、手足も動かぬ病人がただ息の通うばかりという状態である。

家の中でも深さは股にとどくのである。それを得避くる事もできないで、巣を破られた蜂が、その巣跡にむなしくたむろしているごとくに、このあばら屋に水籠りしている予を他目に見たらば、どんなに寂しく見えるだろう。

しかしながらわれとわれを客観して見ればまた一種得難い興味もある。人間のからだでいえば病気じゃ、火難が家の死であらば水難は家の病気じゃなどと空想にふけりながら予は仮床へ帰った。仮床というは台所の隣間で、南へ面した一間の片端へ、桶やら箱やら相当に高さのあるものを並べ立てて、古柱や梯子の類をよろしく渡した上に戸板を載せ、それに畳を敷いたものである。畳もようやく四畳しか置けない。それに夫婦のものと児女三人下女一人、都合六人が住んでいる。手も足も動かせない生活じゃ。立てば頭が天井へつかえる。