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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页

青空文庫

――まあ黙って見ていらっしゃい」

出来上るにつれ、房は大きい髪を持てあました。

「本当にいやあよ、私。私じゃあない人間みたいだわよ、これじゃ」

「どれ」

志野は、素ばしこく前に廻って検査した。

「そんなことあるもんですか! トテ、シャンになったわよ」

遊んでいると、階段を登って来る下駄の音がした。

「おや――、芦沢さん、出ていたのかしら」

然し、下駄の音は隣に行かず、志野の扉の前で止った。

「――今日は」

櫛を持ったまま耳を立てていた志野は声を聞くと、ひどく迷惑な顔した。

「――何の用があるんだろう」

「私なら、かまわないことよ」

「いいのよ」

志野は、ずかずか取繕わない風で立って行った。

「浅田さん――いますか」

志野は、体で入口をふさぐようにして扉(ドアー)をあけた。

「――今日は――いつ来たの」

「さっき」

「……今日は駄目よ」

「誰かいるの」

「お友達――お房さんて――」

ききとれない低声で、二人は何か囁き合った。

「――だって――そんなこと駄目よ、ね、だから……」

甘えたように高まった志野の声が、再びひそひそと沈む。やがて、

「じゃ、さようなら」

勢よく戸を閉め、戻って来ると、志野は照れかくしのように、舌を出した。