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こおりぐらのにかい
氷蔵の二階
宮本 百合子
「女性」1926(大正15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,201 字 · 37 页
気合をこめて引張っては擽ったそうな顔をする。房が到頭ふき出した。
「何よ、それは――はっはっはっ」
つられて、志野も笑い出した。
「――だけれど、あなたみたいに装(なり)ふりかまわないひとはなくてよ――学校にいた時分からそんな髪だったじゃないの」
「そうね」
「もう少し何とかすればいいのにさ。十八九の時分と、二十過ても同じじゃ余り可哀そうよ」
やがて志野は、
「どれ、一寸私にいじらせて御覧なさい」
と、気軽に房の後に廻った。彼女は、器用に、長い、たっぷりした髪を梳き始めた。
「こんなにあるのに――私なら素敵な髪に結って見せるわ――髪の形で喫驚(びっくり)する程ひとって変るもんよ」
自分の毛筋立てや鬢かき迄持ち出し、志野は自分が結っているような洋髪に結い始めた。
「さ、これ持ってて」
彼女は、房に鏡を持たせた。一ところへ形をつけては、
「どう?」
と背後から顔を重ねて自分も鏡を覗きこんだ。
「いいじゃあないの、すっかり可愛くなっちゃうわ」
房は、好奇心の動く、一方、極りの悪そうな表情で云った。
「私の髪、どっさりあったって強(こわ)いから駄目よ、こんなの」
「結いつけないから、そりゃいきなり理想的には行かなくてよ。