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けっとうじょう

決闘場

岡本 かの子

「ペン」1936(昭和11)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,298 字 · 23 页

青空文庫

三人で散歩するにも活動を見物に行くにも、何もかも、ジョーンはまるでワルトンに連れられて行くようであった。其処にアイリスが殆んど居ないのも同然であった。もう以前のアイリスは消失してしまって、今ではワルトンに包まれた混合物のようなアイリスが居た。ジョーンは正真正銘のアイリスが見たかった。不純物を取り除きたかった。不純物を二度と再びくっ付かぬようにしたかった。本当にはっきりそうしたかった。腕で引き裂いて総歯で噛み砕いて、滓にして吐き出して、それを靴の踵で踏みにじって、それから火葬場の炉の中ですっかり焼き尽してしまいたかった。それでもまだ灰や煙がすらすら抜け出てアイリスにくっ付くような気がしてならなかった。憤りと呪いと不安とでジョーンは痩せて熱かった。

ジョーンに引越されてしまったワルトンは友達を一人失った。彼にとってジョーンは碇であった。時には厄介千万であったが、又時には落付かせて呉れる錘であった。嫌に取り済したのが生意気に見えて癪に触ったが、懐かしくも思った。嘗てアイリスの家の近くに居たジョーンは、彼女を連れてよくワルトンの家へ誘いに来たものだった、今ではアイリスが独りで居た。