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きしゃははしる
汽車は走る
小川 未明
「日本の子供」1941(昭和16)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,849 字 · 8 页
春風が吹くころになると、窓のガラスの汚れがきわだって目につくようになりました。冬の間は、ほこりのかかるのに委していたのです。裁縫室の窓からは、運動場の大きな桜の木が見えました。
「あの枝に花が咲くのは、いつのことか。」と、ちらちらと雪の降る日に、外をながめながら思ったのが、はや、くっきりと枝全体にうす紅色を帯びて、さんご樹を見るような気がするのです。そして、一つ一つの、つばみがふくらんで、ぷつぷつとして、もうそれが開くのも間のないことでありました。かよ子は、このごろ、裁縫をしながら、ときどき思い出したように頭を上げて、外をながめるのが楽しみでありました。
「ねえ、みんなで、窓のガラスをふきましょうよ。」
こういい出したのは、かよ子でありました。
「ええ、ふきましょう。この前、おそうじしたのは、いつだったか。ずいぶんしなかったのね。」
「寒いんですもの。空は暗かったし、する気になれなかったでしょう。」
この四月、卒業する高等科の生徒たちは、なんとなく気持ちが浮き浮きとして、明るく元気でした。
「吉田さんは、東京へおいきなきるって、ほんとうですか。」と、年寄って、もう髪に白毛の見える先生が、いわれました。