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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
伏兵のあるのを恐れたからだ。味方の負傷者を調べて見るといずれも傷は浅かったが、鏃に劇毒が塗りつけてあるので負傷者はのた打って苦しがる。そしてだんだんに弱って行く。マーシャル医学士は智恵を絞って負傷者のために尽くしたけれど、二人だけはその夜息が絶えた。土人の死骸を埋葬してから一行は尚進んで行った。一つの部落へ着いた時、不思議にも部落は空虚であった。一人の土人の姿もない。そこで一行は安心して部落の空地へ天幕を張って、その夜の旅宿をそこに定め各※(二の字点、1-2-22)眠りにつこうとした。ちょうど真夜中と覚しい頃、突然部落の家々から一斉に焔を吐き出したので、一同は初めて土人達の計略に落ちたことを感付いた。焔はその間も天幕を包んで四方から刻々に襲って来る。立ち昇る火の粉を貫いて雨のように毒矢が降って来る。無智の土人達は火を怖れて消そうともせず顫えている。馬や水牛やボルネオ犬は――いずれも荷物を運ばせるために市から連れて来た家畜であるが――火光に恐れて手綱を切って焔を目掛けて飛び込もうとする。味方は火薬を持っているだけに危険の程度が大きいのであった。火焔が天幕を焼くようになったら自と火薬は爆発しよう。