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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

そして到頭行き詰まった。その間も兇暴の有尾人種は蕃人特有の狡猾さをもって一歩一歩私達に近寄って来た。こうして彼我の間隔が十間余になった時、彼らは一斉に立ち上がった。何んという立派な体格であろう! もしも彼らに尾がなかったなら、そして全身に毛がなかったなら勇ましい立派な武人であろう……彼らは私達を取り巻いて忽然と踊りを踊り出した。私達二人を中心にして最初グルグルと左へ廻りそれから今度は右へ廻り、またもグルグルと左へ廻りそれからまたも右へ廻る、あたかも大水が渦巻くようにいつまでもいつまでも廻るのであった。

三十五

「こいつが彼奴らの策戦だな!」

こう思った時にはもう私達は彼らの渦に巻き込まれて催眠状態に墜ちていた。

……緑……大空……人猿の顔……そして彼らの叫び声……湖水……日光……毛だらけの手……沢山の沢山の毛だらけの手が私達を地上から持ち上げた。そして緑の林を縫ってどこかへ私達を運んで行く……緑がだんだん深くなる。日光が次第に薄くなる……忽然、一人の老人が私達の前に現われた。何んという智識的の顔だろう。何んという立派な白髪だろう。人猿達の先に立ってその老人は走って行く。