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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

「いいかい読むぜ。聞きたまえよ」

そこでレザールは読みつづけた。その要点はこうである。

――昨夜、すなわち三月十日、時刻もちょうど午前二時頃、両眼の縁に燐光を纒った、犬のような形の動物が、忽然街路に現われたが、府庁官邸の宅地まで行くと、そのまま姿が見えなくなり、それと同時に一軒の家から、恐怖に充ちた男の声が、一瞬間鋭く響き渡ったが、それもそのまま静かになった。そして不思議にも怪獣の姿は、どこにも見えなかったと云うのである。

「燐光を放す動物なんて、実際そんなものがあるのだろうか?」

「さあ」とレザールは考え深く、「全然ないとも云われない。魚には確かにあるのだからね」

「そりゃ魚にはあるだろうけれど――例えば烏賊などはその通りだが、眼の縁だけに燐光を放すそんな獣ってあるものだろうか――それはそれとしてもう一つこの新聞記事で見るとどうやら奇怪な動物なるものは、二匹いるように思われるね」ダンチョンはレザールの顔を見て審かしそうに云ったものである。

と、レザールは微笑を浮かべたが、

「つまり眼の縁だけ燐光を放す昨夜あらわれた怪獣と、去月十日にあらわれた全身に燐光を放す獣と、都合二匹というのだろうね……君もなかなか眼敏くなった。