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さばくのこと

沙漠の古都

国枝 史郎

「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页

青空文庫

穴はあたかも漏斗のように円錐形を呈していて、落ち込む水がそこへはいる滝のようにすぐに落下せずにやはり漏斗形に廻り廻って静かに地底へ潜るのであった。

私は船が波の頂きに一瞬間とどまっている時にこれだけのことを見て取ったので、波が崩れて谷が開けその水の谷へ真一文字に私達の船が突き入った時にはもう水穴は見えなくなった。

この間も船は水穴を目掛けて刻々に進む水勢に引かれて湖水をグルグル廻っている。

何気なく岸の方を眺めて見ると遙か彼方に断崖のように赭黒い色をして聳えている。いつもは岸に擦れ擦れになって湖水の水が湛えているのに、今は一丈余の断崖となって森林を背負って立っている。つまりそれだけ湖水の水が地下に吸い込まれてしまったのである。

こうして私達はどれほどの時間湖水の面に漂っていたか考えて見ることも出来なかったが、とうとう船が渦に巻かれて湖心に出来ている水穴の中へ正に落ち込もうとした時に、天佑とでも云うのであろうか、忽然と水穴が閉ざされ大渦巻が運動を止め湖面は再び鏡のように日光を吸って輝き出した。

私達は初めて元気付いて力を極めて船を漕いだ。そして土人軍の屯ろしている湖水の岸へよじ登った時、蘇生したような気持ちがした。