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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
湖水の水はその容積の三分の二余りを減じていた。水草が水面に旗のように流れ、幾匹かの恐龍と雷龍とが巨大の首を水から出して私達の方を眺めている。水禽は一羽もいなかった。岸に近い水は森林を映し、岸に遠い水は空をひたしていとも平和に澄んでいる。
あの素晴らしい渦巻の恐ろしかった光景はどこを眺めても見当らない。水はいかにも減じてはいるが、太古のままの夢を孕んで森然と静まり湛えている。
私達は互いに眼を見合わせ一言も物を云わなかった。豪雄のラシイヌ探偵さえ空しく湖水を眺めるばかりで、陽に焼けて黒いその顔には驚異の情ばかりが浮かんでいる。
こうして私達は湖水の岸にしばらくの間佇んでいた。
その時、またも湖水の面に以前と同じ奇蹟が行われた。湖心のあたりに蒼黒い穴が忽然と一つ現われたが、そこを目がけて湖中の水が渦巻きながら押し寄せて行く。
何んという奇観! なんという壮大! 湖中に流されて眺めるのと湖岸に立って見渡すのと、こうまで相違があるものであろうか!
……見渡す眼下の湖水の水は何物にか引かれてでもいるかのように渦の外輪は大波を立て、渦の内輪は独楽のように澄み切った速さで廻っている……名も知らぬ畸形の海獣や巨大な水牛やトラコドンは、その渦巻に巻かれまいと水沫を立てて狂い廻りながらしかも水勢には争い難くやはり渦巻に巻か