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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
と云うのは老人が口癖のようにこのように私に語るからであった。
「わしは大変年老いている。わしは間もなく死ぬだろう。そうしたら君こそここの王じゃ。ここの国王に成ったからには、あの水底の地下室の一切の財宝の所有者じゃ! 君の随意にすることが出来る」
しかし老人は容易のことではこの世を去りそうにも見えなかった。钁鑠として壮者を凌ぎ森林などを駈け歩いても人猿などより敏捷であった。私も老人の真似をしてよく森林を駈け歩き彼らに負けまいと努力した。
こうして半年が経過した。そして一年が過ぎ去った。
ある日老人が私を呼んで、種々の鍵を手渡してくれた。そしてどうして一日のうちに大水を自由に動かし得るかそういうことまで話してくれた。それは老人の科学思想がいかに発達しているかを証明するに足るところの霊妙を極わめた装置であって、それを私が知った時にはこの老人を敬う念が以前よりは一層加わっていた。
老人は私の手を握った。
「君は明日からここの王じゃ。彼らを愛してやりたまえ。私は少しく休息しよう」
こう云って優しく目を閉じた。その日が暮れて夜となり月が天上に輝いている時老人は安らかに死んで行った。