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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
沙漠ではお爺さんが待っています。ではさようなら、さようなら!」
ほんとにその声は美しい。張は石のように佇んだままその声の後を追っていた。恋愛を覚えた人のように。
まだ車中では眠っていた。香爐からは煙りが上がっていた。
八
(以下は支那青年張教仁の備忘録の抜萃である)
私達はオムスクで一泊した。翌朝早くホテルを出てイルチッシ河の河岸へ出た。流程二千三百哩、広々と流れる大河の態は大陸的とでも云うのであろう。一行は汽船へ乗り込んだ。セミパラチンスクまで行くのである。両岸はキルギスの大平原で煙りの上がるその辺には彼らの部落があるのであろう。セミパラチンスクで二泊した。これからは陸路を行くのである。塔爾巴哈台までの行程にはただ禿げ山があるばかりだ。一望百里の高原は波状をなしてつづいている。ところどころに湖水があって湖水の水は凍っていた。馬と駱駝と荷車の列――私達の一行はその高原をどこまでもどこまでも行くのであった。塔爾巴哈台からは支那領で、それから先はどことなく沙漠の様子を呈していた。ノガイ人種を幾人か頼み彼らに駱駝をあつかわせ、烏魯木斎指して進んで行った。