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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
「新趣味」博文館 、1923(大正12)年3月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,076 字 · 220 页
姿の見えない向こう側の男は、こう云ってまたも笑うのであった。張教仁は恐怖よりも怒りの方がこみ上げて来た。
「使命を帯びて来たんだって!」張教仁は怒鳴り出した。
「そんならご大層のその使命をさっさと果たすがいいじゃないか!」
「それなら、そろそろ果たそうかね。君のためには急ぐよりも、ゆっくりした方がいいのだがね」
相手の男はまた笑った。
「その斟酌には及ぶまいて。君の方でゆっくりするようなら、僕の方で事件を急がせるまでだ!」
「事件を急がせるってどうするんだね?」
「君に飛びかかるということさ! 君を撲るという事さ!」
「なるほど、君は勇敢だね」
眼に見えぬ男は、こう云うと、また例の厭な笑い方を、臆面もなくやり出したが、ちょっと改まった言葉つきで、
「張教仁君、手を延ばして、君の真正面へ出すがいい、真正面の空間に、何かブラ下がっている筈だ。そいつが僕の使命なのだ」
張教仁は無言のまま、両手をズウと出して見た。はたして正面の空間に、一筋の糸で支えられた二振りの抜き身の短刀が、上の方から下がっていた。張教仁はヒヤリとしたが、度胸に狂いは生じなかった。反抗心がムラムラと彼の胸中に起こって来た。