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さばくのびき

沙漠の美姫

国枝 史郎

「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页

青空文庫

一

一

「君は王昭君をどう思うね?」

私は李白にこうきいてみた。

と、李白は盃を置いたが、

「まあK君これを見てくれたまえ」紙へサラサラと詩を書いた。

昭君払玉鞍。上馬※紅頬。

今日漢宮人。明朝胡地妾。

「成程」と私は薄ら笑いをしたが、

「ほんとに君はそう思っているのか?」

「こう思うより思いようがないよ」

「左様なら」と私は李白の家を出たが、その足で王安石の家を訪ねた。「君は王昭君をどう思うね?」

「まあK君これを見てくれたまえ」

で、王安石は詩を書き出した。

明妃初出漢宮時。涙濕春風鬢脚垂。低囘顧影無顔色。……

「いやもうそれだけで結構だ」

私はこういって書くのをとめた。

「ほんとに君はそう思っているのか?」

「こう思うより思いようがないよ」

「左様なら」

と私は王安石の家を出たが、その足で欧陽修の邸をたずねた。

「君は王昭君をどう思うね?」

「まあK君これを見てくれたまえ」

欧陽修が筆を握ったので、私が露骨に渋面をしてみせた。

「いずれは君も詩を書くんだろう?」

「うむ、まあ、そりゃァそうだがね」

「で、長いかね短いかね?」

「そうだなァ鳥渡長い」

「君、まことに済まないが、要点ばかりを書いてくれたまえな」