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さばくのびき
沙漠の美姫
国枝 史郎
「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页
二
漢庭の女官を乗せたところの、百両の戦車がその後からつづいてそうしてその後からは糧秣の小荷駄が、牛だの豚だの家鶏だのの、家畜の群と共に従って来た。
同勢はこぞって一万人であった。
万里の長城を越えた頃から、あたりの風景は異色を見せて来た。
平沙、平沙、平沙であった。沙丘、沙丘、沙丘であった。
平沙には匈奴王にまつろわぬところの、無数の種族の蛮人達が、現れたり隠れたりして敵意を示した。また沙丘には狼の群や、孤独の獅子や夫婦者の虎が、咆哮を上げて威嚇した。
空は大方黄塵のために、曇天の相を呈していたが、そこには肉食の禿鷹がいて、兵士の斃れるのを狙っていた。
夕陽が沙の海へ落ちる前に、テントを張って野営をし、まだ朝露の消えない中に、テントを撤して発足した。
小さい部落を襲うことによって減って行く食物を補充し、また性欲の満足を計った。
不平をいう兵士は鞭で打たれ、反抗する将校は絞殺された。
牛糞の匂と家畜の匂と、兵士達の歌声と女達の笑声と、獣の吠声と車輪の軋音と、踏まれる沙から発する音と、武器と武器との触れ合う音とが、沙漠の静寂をおびやかした。
二
呼韓邪単于は老年であった。