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さばくのびき

沙漠の美姫

国枝 史郎

「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页

青空文庫

畑を耕すこともしない。そうしてわれわれには文字がない。あるものといえば言葉ばかりだ。口約束だけで間に合わせて行く。しかも然諾を重んずる。子供の頃には羊に騎る。弓をひいて鳥を射る。青年になると馬に騎って、弓をひいて狐兎を射る。食い物といえば肉ばかりだ。男は誰も彼もみんな兵士だ。平和の時には牧畜をするが、急があれば戦いをする。儲かると見れば突進するし、損をすると見れば直に退く。逃げるということを恥としない。利ノ有ル所礼儀ヲ知ラズ――これが我々のモットーだ。そうしてこれはよいことだと思う。我々は徹底した功利主義者だ。これで十分よいと思う。先祖の一人に偉人があった。冒頓という名で豪雄だった。人質に行っていた月氏の国から単騎逃げて国へ帰った。その父の名を頭曼といったが、これがその時代の単于だったのだ。単于という意味はどういう意味か? それは実に広大という意味だ。匈奴の酋長の尊称だ。さてその冒頓という人物だが、恐ろしい程に偉い奴だった。徹底的に部下を臣事させてやろう! こう考えて策略を用いた。その道具として鳴鏑を用いた。まず部下にこういい渡した。『俺が鳴鏑を射込んだら、一人残らずそいつを射ろ。