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さばくのびき
沙漠の美姫
国枝 史郎
「サンデー毎日」1928(昭和3)年4月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 页
、ポツリポツリと話す様子は全く立派なものであった。
そういう呼韓邪単于の肩へ、自分の肩をもたせかけて呼韓邪単于の顔へ見入って、恍惚とした眼付をして、話に耳を澄ましているところの、王昭君の姿と来ては、巨大な樫の老いて強い幹へ、青いなよなよとした新鮮な蔦がからみついているような趣きがあった。感動して王昭君が頷く毎に、耳に下げてある黄金の耳環が、軽くひらめいて頬を打った。それへ篝火が反射するからであろう、キラキラと光が矢のように走った。
で、そこにあるものといえば、粗豪と都雅との群像美であった。
「いいな」
と私は心から思った。
「王昭君が後宮を出て、沙漠へ来るまで嬉しそうに、陽気ではしゃいだのは当然だ」
こうも私は心から思った。
「さて沙漠の夜景色でも見ようか」
暗が沙漠を溺らせていた。遥の前方の沙丘の上に、時々松火の火が見えたが、他部落の蛮人がそっちの方角から、こっちを狙っているのであった。風が沙漠を渡っていた。遮る物もない筈だのに、風の向が絶えず変った。向うからこっちへ吹いてくる時には獣の吠える声が聞えて来た。こっちから向うへ吹いて行く時には、王昭君へ従って来たところの、漢庭の宮女を相手にして、たわむれているらしい匈奴達の声が、向うへ送られて行くようであった。