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かわあかり
河明り
岡本 かの子
「中央公論」1939(昭和14)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,244 字 · 98 页
そして眼を覚ました僕の枕元に座って、さめざめと泣くのです。堺屋のお内儀さんに満座の中で恥をかかされて、居たたまれなかったと云います」
これも後で訊ね合せて見ると、母親の術であるらしく、ほんのちょっとした口叱言を種に、子供の同情を牽かんための手段であった。
「何でも下へ下へと掻い潜って、子供の心を握って自分に引き付けようとするこの母親の術には、実に参りました。子供の心は、そういうものには堪えられるものではありません。僕は元来そう頭は悪くない積りですが、この時分は痴呆症のようになって、学校も仮及第ばかりしていました」
木下が九つの時に堺屋の妻は、女の子を生んだ。それが今の娘である。しかし、堺屋の妻は、折角楽しんでいた子供が女であることやら、木下の生みの母との争奪戦最中の関係からか、娘の出生をあまり悦びもせず、やはり愛は男の子の木下に牽れていた。木下の母親は、「自分に実子が出来た癖に、まだ、人の子を付け覗っている。強慾な女」と罵った。
ところが、晩産のため、堺屋の妻は兎角病気勝ちで、娘出生の後一年にもならないうちに死んで仕舞った。
その最後の病床で、堺屋の妻は、木下の小さい体を確り抱き締めて、「この子供はどうしてもあたしの子」