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かわあかり
河明り
岡本 かの子
「中央公論」1939(昭和14)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,244 字 · 98 页
家というものを護らせられるように出来ている女の本能、老後の頼りを想う女の本能、そういうものが後先の力となって、自分で生むと生まないとに係らず、女が男の子というものに対する魅着は、第一義的の力であるのであろう。
「そういっちゃ何ですが、僕は子供のときはおっとりして器量もなかなかよく、つまり、一般の母性に恋いつかれるように出来た子供だったらしいのです」木下は苦笑しながら云った。
娘は片親でも鷹揚に美しく育って行った。いつの間に聞き込んだか、木下と許婚の間柄だと知って、木下を疑わず頼りに思い込んでいる。ところが女の為めに女を見る目を僻ませられて仕舞った若い頃の木下には、娘がやさしくなつかしそうにする場合には、例の母親がした媚びて歓心を得る狡い手段ではないかと、すぐそれに対する感情の出口に蓋をする気持ちになり、娘が無邪気に開けて向って来るときは、堺屋のおふくろがした女の気儘独断を振り翳して来るのではないかと思って、また、感情に蓋をする。
「今考えてみれば、僕は僻みながらも僕の心の底では娘が可哀想で、いじらしくてならなかったのです」
「僕はこの二重の矛盾に堪え切れないで、娘に辛く当ったり、娘をはぐらかして見たり、軽蔑してみたり、あらゆるいじけた情熱の吐き方をしたものです。