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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
首領は何時彼の背後に迫ってくるか知れないのだ。
「ウーン。キ、君は誰だ!」
と赤毛は細い声で呻るように云った。
「誰でもいい。君に防弾衣を恵んだ男だ。――それよりも危険が迫っている。この部屋から早く逃げ出さねば、生命が危い。さあ、云いたまえ。どこから逃げられるのだ」
「あッ。――貴方は団員ではないのだネ。イヤ、そんなことはどうでもよい。僕はもう死んでいる筈だったのだ。逃げよう、逃げよう。貴方と逃げよう。さあ、そこの床にあるスペードの印のあるところを押すんだ。早く、早く」
「なにスペードの印! アッ、これだナ」
と怪人が喜びの声をあげたとき、不意に天井の方から破れ鐘のような声が鳴り響いた。
「帆村探偵君、なにか遺言はないかネ」
首領対帆村
――遺言はないか?
と天井裏から叫んだ者は、紛れもなく密室から逃げ去った首領にちがいなかった。その首領は(帆村探偵君!)と呼んだが、一体あの青年探偵帆村はどこにいるというのだ。此処は×国間諜団の巣窟ではないか。累々と横わるのは、みな×国の間諜たちだった。もっとも一人だけ覆面を取らぬ団員があったが……。
「――君の勝だ! 好きなようにしたまえ」