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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

と、突然叫んだのは、覆面を取らぬ彼の団員だった。彼はスックと立ち上るなり、両手を頭上にあげて、敵意のないのを示した。

「はッはッはッ」と天井裏の声は憎々しげな声で笑った。「日本の探偵さんは、案外もろいですネ。……さァ、動くと生命がないぞ。じッとしているんだ」

いよいよ首領は、この部屋に出て来る気勢をみせた。それを知ると「赤毛のゴリラ」は色を失ってしまった。首領が出て来れば、赤毛の生きていることが分り、一発のもとに斃されるに決っている。いや既に首領は赤毛が帆村から恵まれた簡易防弾衣で生命を助かったことを知っているかも知れない。彼としては団員として働いていた間は死を覚悟していた。しかしもう彼は団員でもない。それどころか既に銃殺されて黄泉の客となっていた筈である。死線を越えて――彼の場合は、死ぬのが恐ろしくなった。

「どうか、私を助けて下さい――」

赤毛はワナワナ慄えながら帆村の腰に獅噛みついた。

室内にはシューシューと可なり耳に立つ音がしている。それは毒瓦斯をしきりに排気している送風機の音だった。排気が済まないと、首領は出て来られないのだと、帆村は早くも悟った。