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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

わが軍の怪力線の煙と消えたので彼もすこしは本望じゃろう」

そういって牧山大佐の声が受話器を通じて感慨無量といった顔をしている帆村の耳に響いた。

それから巨人機は恐ろしいほどスピードを増して、時間にして五、六時間も飛行した、哨戒員は暗視機で四方八方を睨み、敵機もし現れるならばと監視をゆるめなかった。機関砲の砲手は、砲架の前に緊張そのもののような顔をしていた。しかし其後は何者も邪魔をするものが現われなかった。

「牧山大佐どの。もう行先だの目的だのを話して下すってもいいでしょう」

と帆村は大佐の耳に口を寄せて云った。

「君の方がよく知ってるじゃないか」

「やはりベーリング海峡ですね」と帆村はズバリといった。「プリンス・オヴ・ウェールス岬とデジネフ岬のある中間でしょう」

「正にそのとおり!」と大佐は帆村の手を固く握った。

そういっているところへ、受話器に警報が入ってきた。

「先刻マデ刻々低下シツツアッタ気温ガ、逆ニ徐々ニ上昇ヲ始メタ。コノ気温異常上昇ハ既ニ地方気象統計ニヨル記録ヲ破壊シ、イマヤ驚異的新記録ヲ示シ、シカモ刻々自ラソノ記録ヲ破リツツアリ」

牧山大佐は意味あり気に帆村の肩をドンと叩いた。