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りゅうこうさっかのし
流行作家の死
野村 胡堂
「新青年」1932(昭和7)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页
少年は大分応接間の空気に慣れて、何うやら彼うやら、これだけの事を報告しました。
「それで結構、さア、お礼の百円だ、受取ってくれ――でもう一つ二つ聞くが、電話の後で、その女の人からお礼を貰ったろうネ」
「え、百円札が一枚」
「それから着物の柄を覚えて居るか」
「よく知ってます」
「どんな着物だ」
「黒いピカピカしたコートでした」
「草履か下駄か」
「靴です」
「よし、もう沢山だ」
千種十次郎に斯う言われるとお礼の紙幣を引っ掴むように、少年は応接間を飛出しました。
「矢張り浪子夫人だ」
と足の勇。
「いや、そう簡単には行かんぞ」
「どうして? あの顔や、様子は、浪子夫人そっくりじゃないか、浪子夫人が離屋へ忍び込んで、うたた寝をして居る夫の口へ青酸を滴し込んで、鍵をかけて飛出して、渋谷の駅前で、夕刊売の少年に、此社へ電話をかけさしたとしたらどうだ」
足の勇は日頃にも無い雄弁に捲し立てます。
「いや、浪子夫人は、夫を殺した後で、何んの為に電話をかける必要があるんだ、しかも、一二度しか逢った事の無い君にだよ」
「――――」
「それに、十四や十五の少年が、あんなにはっきり女の顔を記憶して居るのもおかしいし、十一時過ぎの往来で逢った人間の、着て居たコートや、履物まで記憶して居るのは少し変じゃないかネ、何より、今時、昔の女学生じゃあるまいし、和服