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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

足の勇の声が大きくなると、少年は少し脅えたように口を緘みましたが、

「それから何うしたんだ――」

千種十次郎は、さり気なく次の言葉を引出し乍ら、足の勇の軽率な態度に一瞥をくれました。

「え、女でした、若い綺麗な女の人でした」

「和服か、洋服か」

「和服です、狐色の毛皮の襟巻で、始終顔を半分隠すようにして居ました」

「…………」

十次郎と勇は顔を見合せました。和服で毛皮の襟巻というとどうやら別れた夫人の浪子の匂いがします。立花秀子は洋装一点張で、和服と言うものを着た例が無く、それが又自慢の一つでもあったのです。

「毛皮の襟巻で顔を隠して居るのに、何うして、若いとか、綺麗とか言うことが解ったんだ」と千種十次郎。

「僕に、電話を掛けさして居る時、横のガラス窓の外から見て居ましたが、その時、何にかの弾みで襟巻が外れたんです」

「どんな顔をして居た」

「眼の大きい、眉の濃いそれでも綺麗でした」

「よしよし大抵分った。で、電話を何んと掛けたか知ってるだろう」

「よく知ってます。関東新報の編輯へかけて早坂勇と言う方を呼出して、――小説家の小栗桂三郎が自殺した、特種だから、貴方の手柄にするように――と言い付けられたんです」