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あさまさんろくより
浅間山麓より
寺田 寅彦
「週刊朝日」1933(昭和8)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,574 字 · 8 页
たのではないかという気がする。
峰の茶屋には白黒だんだらの棒を横たえた踏切のような関門がある。ここで関守の男が来て「通行税」を一円とって還り路の切符を渡す。二十余年の昔、ヴェスヴィアスに登った時にも火口丘の上り口で「税」をとられた。その時はこの税の意味を考えたが遂に分からなかった。この峰の茶屋の税もやはり不思議な税の一つである。あとで聞くとこれは箱根土地株式会社の作った道路で専用道路だからとの事であった。
峰の茶屋から先の浅間東北麓の焼野の眺めは壮大である。今の世智辛い世の中に、こんな広大な「何の役にも立たない」地面の空白を見るだけでも心持がのびのびするのである。こんなところで天幕生活をしたらさぞ愉快であろうといったら、運転手が、しかし水が一滴もありませんという。金のある人は、寝台や台所のついたカミオンに乗って出掛けたらいいだろうと思われるが、まだ日本にはそういう流行はないようである。
鬼押出熔岩流の末端の岩塊をよじ上ってみた。この脚下の一と山だけのものをでも、人工で築き上げるのは大変である。一つ一つの石塊を切り出し、運搬し、そうしてかつぎ上げるのは容易でない。