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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

「発火信号、用意。赤星三点!」

ああなんという思い切った命令であろう。

敵の駆逐機隊は、頭上に迫りつつあるのだ。だからいま発火信号をすることは、柳下機に本艦のありかを知らせることにはなるが、同時に相手に、日本の潜水艦がここにおりますぞと、知らせるようなものである。そんなことをすれば、ホ型十三号自身、駆逐機隊から爆弾を落されることは明らかではないか。

しかも水原艦長は、決然として発火信号の用意を命じたのである。

やがて奥の方から、信号兵の声で、

「発火信号、赤星三点、用意よろし」

と、はっきり返事があった。

「うむ。――発射!」

どーん、ぱぱぱっと、赤星三点! きらきら光りながら、風に流れてゆく。

艦長以下、この発火信号がもたらす効果いかにと、石像のように艦橋に突立っている。

「聴音班報告。柳下機は近づきました」

「うむ」

と艦長は、うなる。

伝声管が鳴って、当直入野一等兵曹がかけよる。

「艦長、無電班報告。英海軍駆逐機隊の無電交信を傍受せり。方向は、東南東、距離不明なれども、極めて接近せるものと認む」

発信符号をしらべてあるから、無電の主は何者だと、すぐに分かるのだ。