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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

川上機関大尉の酒壜

わが練習艦隊須磨、明石の二艦は、欧州訪問の旅をおえて、いまやその帰航の途にあった。

印度を出て、馬来半島とスマトラ島の間のマラッカ海峡を東へ出ると、そこは馬来半島の南端シンガポールである。大英帝国が東洋方面を睨みつけるために築いた、最大の軍港と要塞とがあるところだ。

そのシンガポールの港を出ると、それまでは東へ進むとはいえ、ひどく南下航路をとっていたのが、ここで一転して、ぐーっと北に向く。

そこから、次の寄港地の香港まで、ざっと三千キロメートルの遠方である。その間の南北にわだかまる大海洋こそ、南シナ海である。

練習艦隊はシンガポールを出てからすでに三昼夜、いま丁度北緯十度の線を横ぎろうとしているところだから、これで南シナ海のほぼ中央あたりに達したわけである。

カレンダーは四月六日で、赤紙の日曜日となっている。

夜に入っても気温はそれほど下らず、艦内は蒸風呂のような暑さだ。

この物語は、二番艦明石の艦内において始る。――

天井の低い通路を、頭をぶっつけそうにして背の高い逞しい士官が、日本酒の壜詰を下げてとことこ歩いてゆく。