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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
「貴様だな、昨夜飛行甲板の上いっぱいに、ペンキでいたずら書をやったのは」
「そんなことを――」
「黙れ。貴様の手首にくっついている黒ペンキが、なにもかも白状しているぞ。なぜあんなことをやった。これ、こっちへ顔を見せろ」
といったが、その時スミス中尉の心臓はどきっととまりそうになった。
「あっ、貴様はこの前の怪中国人!」
中尉は、リット少将に眼くばせすると同時に、非常呼集の笛をひょうひょうと吹いた。
それに応じて、廊下にどやどやと入りみだれた靴音が近づいてきた。警備隊員が銃をもって駈けつける音だ。
いまはこれまでと、川上機関大尉は観念した。この敵をなぐり殺すことなどは、さしてむつかしいことではないが、自分にはもうすこし果さなければならぬ重大任務がある。ここは一刻も早く逃げることだ。
だが警備隊員はすでに入口にせまっている。ほかに出口はない。リット少将もスミス中尉もピストルを持っているだろう。とすると遂に袋の鼠となりはてたのか。
(捨身だ!)
とっさに肚をきめた川上機関大尉は、
「えい!」
と叫んで身をしずめた。
「うーむ」
スミス中尉は脾腹をおさえ、その場に倒れた。