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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

それ以後のことは、私は――私は知らんのであります」

「知らない。ふむ、そうか」

副長はさらに大勢の兵員を集めて聞いてみたがどうも分からない。

川上機関大尉が帰艦していないことは、長谷部大尉の耳にも入らずにはいなかった。

彼はすぐさま機関室へとんできた。

「川上機関大尉が帰らぬというが本当か」

それは遺憾ながら本当のことだった。

「これはけしからぬ。よし、俺がいって探してこよう」

長谷部大尉は、すぐさま艦長のところへ駈けつけて、機関大尉を探すために上陸方をねがい出でた。

すると艦長は、

「司令官にお聞きするから、暫く待て」

といった。

暫くたって、長谷部大尉は艦長によばれていってみた。嬉しや上陸許可が下りたかと思いの外、

「司令官はお許しにならぬ。誰一人も上陸はならぬといわれる。また一般にも、言葉をつつしみ、ことに飛行島の方に川上機関大尉のことを洩らすなとの厳命だ。のう、分かったろう。分かったら、そのまま引取ってくれ」

艦長は、長谷部大尉の胸中を思いやって、苦しそうにいった。

そういわれれば、下るよりほかない軍律だった。しかし長谷部大尉の肚のうちは、煮えかえるようだった。