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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
数え出したフランク大尉の緊張にひきつってゆく真青な顔。
だが見よ、どうしたというのだ。川上機関大尉は、死が数秒の後に迫っているというのに、エンジンの前のハンドルを懸命にあやつり、メートルの指針をいちいち直してゆく操作ぶりのあざやかさ! まるで目前の仕事に身も魂も打ちこんでいる真剣そのものの姿ではないか。フランク大尉は、その凄じい気魄にたじたじとなったが、必死にこらえて、
「――五ツ、六ウ、……」
のこるはわずか、あと四つの数だ!
ピルトルの引金を握りしめた右手から油汗がにじみ出した。
轟々たるエンジンの唸は、室内をゆりうごかして、一段とものすごい。
「――七、八ア、九ノ……」
あっ、のこりの数は、もうあと一つ!
そのとき突然、高声器が大きな声を発した。
「二十五ノットに、スピードを上げい!」
司令塔からの号令だ。
「はい、二十五ノットに上げまあす」
川上機関大尉は、一秒のおくれもなく、伝声管のなかに復誦した。そしてただちに給油弁を開くために、ハンドルをぐるぐる廻しはじめた。
(十オ!)
と、最後の数字をかぞえようとして、フランク大尉は、それを喉の奥にのみこんだ。