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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

汐焼した顔は、赤銅色だ。彼は歩きながら、エヘンと咳払をした。

士官は、ある一つの私室の前で足をとめた。そして大きな拳固をふりあげて、こつこつと案外やさしく扉を叩く。

「おう、誰か」

と内側から大きな声がする。

訪問の士官は、ちょっと緊張したが、やがて硬ばった顔をほぐして、

「俺だ。川上機関大尉だ。ちょっと邪魔をするがいいかい」

するといきなり扉が内側にぽかりと開いて、

「なんだ、貴様か。いつもに似ず、いやに他人行儀の挨拶をやったりするもんだから、どうしたのかと思った。おう、早く入れ」

「はっはっはっはっ」

のっぽの川上機関大尉は笑いながら、ぬっと室内に入る。

「おい長谷部。これを持ってきた」

と、酒壜を眼の前へさし出せば、長谷部大尉は眼をみはり、

「やあ、百キロ焼夷弾か。そいつは強勢だ。まあ、それへ掛けろ」

長谷部大尉は、上はシャツ一枚で、狭いベッドの上にあぐらをかく。川上機関大尉は椅子にどっかと腰を下した。

二人は同期の候補生だった。そして今も同じ練習艦明石乗組だ。

もっとも兵科は違っていて、背高のっぽの川上大尉は機関科に属しており、長谷部大尉は第三分隊長で、砲を預かっていた。