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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

それ以来ずっと、この軽旅客機は、今にも飛びだしそうな恰好で、飛行甲板にいるのであった。

その二人の巨漢は、今なお鋼鉄の宮殿の中において、リット提督やその幕僚と向きあっている。誰の眼も、まるで兎の眼のように赤い。ゆうべからこっち、徹夜でもって相談がすすめられているらしい。したがってその相談の重要性についても大方察しがつくであろう。

リット提督は、卓上にひろげた大きな世界地図を前にして、傲然と椅子の背にもたれている。左手にしっかりと愛用のパイプを握っているが、火はとくの昔に消えていた。よく見ると、広い額の上で、乱れた銀髪がぶるぶると小さく震えているのが分かるだろう。

「さあ、どうされるな。イエスか、ノウか、はっきり御返事がねがいたい」

提督は、そういって、二人の巨漢に火のような視線を送った。

この巨漢たちは誰であろう。

一人は、例のソ連の特命大使ハバノフ。もう一人の巨漢は、その服装で分かるようにソ連武官――くわしくいえば、極東赤旗戦線軍付のガーリン大将であった。

この両巨漢は、リット提督を前にして、しばらく小声で言葉のやりとりをしていたが、そのうちに両者の意見が一致したらしく、ガーリン大将は、すっくと席から立ち上った。