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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
無電を出すことをお許しになりませんと、わが大戦隊はいざというときに、大混乱をおこすおそれがあります」
「いや、無電を出すことを許せば、わが飛行島大戦隊の在所を、敵に知らせるようなものじゃ。そいつは絶対に許すことができぬ」
リット提督はこのへんで、やっとふだんの提督らしい威厳をとりもどしたようであった。
「はあ、分かりました」
スミス中尉は、やむを得ないという顔をして、
「では当直へ、そのように伝達いたします」
「うむ」
スミス中尉が、室を出てゆこうとした時、
「ああスミス中尉。ちょっと待て」と提督は声をかけた。
「はあ、何か御用でありますか」
「わしは今夜司令塔へ詰めようと思う。だからあと三十分も経ったら、ここへ迎えにきてくれんか」
「はい、かしこまりました。すると今夜はもうお寝みにならないのですか」
「うん、わしは今夜、もう寝るのはよした」
「御尤もです。私も今夜あたり、どうも何か起りそうな気がしてなりません。提督が司令塔にお詰めくだされば、わが飛行島の当直全員もたいへん心丈夫です」
スミス中尉は、提督が悪夢におびえて睡られなくなったのだとは知らないから、リット提督が司令塔へ出かけるようでは、今夜はよほど警戒しなければならぬわけがあるのだと思った。