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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
「おう、杉田、帰ってきたか。みんなが心配していたぞ」
「杉田、俺のおしゃべりのせいで、貴様が引張られたんだといって、みんなが俺をいじめやがった。そんなことはないなあ、杉田」
が、杉田は、なにも口を開こうとはしなかった。
「おい杉田。どうしたんだ。艦長に対してどう御返事をしたのだ」
杉田はハンモックの中にもぐりこんだ。そして顔を僚友の方へちょっとだけ向けて、
「おい皆。どうもすまん。俺の気のつけようが十分じゃなかったんだ。しかし皆、どうか信じていてくれ。俺だって帝国軍人だ。卑怯なことはせん。よくそれを覚えていてくれ。――もう俺は寝る」
そういって杉田二等兵は、毛布のなかに顔をうずめてしまった。
僚友たちも、それをみると、やや安堵して自分のハンモックにかえっていった。
しかしこの事件について何かの疑いをかけられている杉田二等水兵は、今宵はたして安らかに眠れるであろうか。
練習艦明石にとって、記録すべき不祥事件の夜は、やがて明けはなれた。
「総員起し」の喇叭が、艦の隅から隅へとひびくのであった。水兵たちは、また元気に甲板上を、そうして狭い艦内をとびまわる。平生とは、なんの変ったこともない風景であった。