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うかぶひこうとう

浮かぶ飛行島

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页

青空文庫

室内は一瞬にして真暗になった。

「カワカミを逃がすな。撃て!」

逆上したか、スミス中尉が叫んだ。

銃声がつづいた。暗中に、銃口から吐きだされる錆色の焔。

うわーっと、奥の方でうめいた者がある。そして床の上に転がったらしい物音。

川上機関大尉がやられたのか?

いや、彼は飛鳥のように身をかわして、出入口にすりよると、警備隊と入れかわって、さっと外にとびだした。

甲板は冷たい雨と風とにたたかれていた。しかし夜明が近くなったとみえ、空がぼんやり白んでいた。

甲板を昇降口の方へ一散に走りながら、川上機関大尉は組立鉄骨の間に残してきた杉田二等水兵のことを心配した。もう夜が明けるとすると、早く彼をどこか別のところへ隠さなければならない。あのままでは、きっと見つかってしまうであろうと思った。

太い鋼索をたよりに、昇降階段をすべるように駈けおりていたとき、とつぜん彼の鼻先にどーんと大きな音がして、空中に赤と青との星がばらばらと散った。花火だ。

「あっ、花火信号だ。非常警報だぞ。全戦隊に呼びかけたものらしいが、はて何ごとが起ったのかしら」

と、いぶかる折しも、下の飛行甲板から叩きつけるような爆音が起り、一台の飛行機がぶーんと滑走路を走りだした。