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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
と長谷部大尉は、分隊長に声をかけた。
「おお当直将校。そういう妙な噂が立ったので、いま杉田の衣嚢をとりよせて調べてみると、ほら、こういう遺書がでてきました」
「えっ、遺書? どれ、――」
と長谷部大尉が手にとってみると、なるほど用箋一枚に、何か、かんたんに書きつけてある。
それを読むと、
「杉田ハ決心シマシタ。飛行島ニ川上機関大尉ノ行方ヲタシカメルタメ脱艦ヲイタシマス。再ビ生キテ皆サマニオ目ニカカレナイコトト覚悟ヲシテイマス。シカシ御安心下サイ。杉田ハ決シテ卑怯ナフルマイヲ致シマセン。郷里ノ方ヘハ、海ニ墜チテ死ンダトダケオ伝エクダサイ」
とうとうやったな――と、長谷部大尉は思った。
杉田二等水兵は、ついに機関大尉の行方を案じて、脱艦したのである。脱艦事件というものは、外国の軍艦にあっても、わが帝国軍艦には例のないことだ。それはたいへん重い罪としてある。杉田は、その重い罪であることを十分承知で、死の覚悟をもって脱艦したのである。その目的は、川上機関大尉の行方を、たしかめるためだというのだ。ああなんという悲壮な決心であろうか。
長谷部大尉はその遺書を手にしたまま、分隊長はじめ一同の顔をぐるりと見まわした。